平成9(97)年には「関東の駅百選」に選定される名駅舎となった。

 原宿駅には、日ごろ使われないホームがある。まず、明治神宮に直結し、初詣のときに使用される臨時ホーム。

 もうひとつ、皇室が那須の御用邸などに向かう際、専用列車を発着させるときにのみ使用される、「皇室専用ホーム」がある。

 原宿に生まれ育った家城定子さんという女性が2002年に出版した『原宿の思い出』という書籍(講談社出版サービスセンター)の中には、<地元の人たちは、ここを「皇族駅」と呼んでいました>と書かれていた。

 交通事情も変わった近年、皇室専用ホームの利用機会は激減、最後に利用されたのは01年のことだという。

<乗り物が飛行機や新幹線になった現在、「皇族駅」は人々から忘れられたかのように静まり返っています>

 と家城さんが言うように、皇室専用ホームは、喧騒のなか、静かにいまもたたずむ。

(太田サトル)

週刊朝日  2016年3月25日号