京都大学の先生方はみんな猛獣で、自分は世界一と思っている人がすごく多い。そういう人のそばにいて、現在進行中の生の考えを聞けるのが京都大学のいいところです。

 しかしまねをしてはいけない。目標はもっと遠くにあり、先生を越えることが求められています。研究の現場では教授も学生も対等です。自分の研究に教授からコメントをつけられたら、「先生はそう思ってるかもしれないけれど、私はこう思っている」と反論してください。

 そして、自分の学問の最前線がここにあるんだと感じてください。講義に行くことも本を読むことも大事だけれど、現場にどんどん行ってほしい。最前線は研究室ではなく、自分が材料を見つけられる場所にあります。学生たちはフィールドワークを一生懸命やって、誰も見てないものを見てやろうとします。それが、京都大学が「探検大学」といわれるゆえんです。

 京都大学を落ちて他の大学に行く子は、しっかり勉強して大学院でまた京都大学に来てくれればいい。それから京都大学はセミナーや研究会が一般に開かれているので、他の大学に行っても、そこにどんどん参加してください。

 浪人してもう一度受けたい人は、教科書を勉強してください。京都大学の入試問題は、僕も何度も作ったけれど、教科書からしか出せないんです。でも心してほしいのは、教科書の文面どおりには出ないということ。暗記してもダメです。書いてあることを理解しないといけません。そして、ここでも対話が重要です。教科書を見て、お互いに問題を出し合い答え合うのもいいでしょう。

 研究のアイデアは取るに足らないことから生まれます。食事をしながら話題になったちょっとしたことが頭に残り、風呂に入っているときにふと「これ、おもろいやん」と出てきたりする。そのためには、分野を超えたいろいろな人と話すことが重要です。ぜひ対話を楽しみにして来てください。対話を通じ、いろいろなことを知るようにしてください。教員たちはみなさんが来るのを待っています。

週刊朝日 2016年3月25日号