海上保安庁は、本誌の取材にこう答えた。

「遺体に外観上不審な点がないこと、漁港のテトラポッドで釣りをしていた2名が泳いで船を追いかける染谷さんらしき人を目撃していることから、事件性はないと判断した」(中城[なかぐすく]海上保安部警備救難課)

 だが、この釣り人たちは重大事故につながりかねない光景を目の当たりにしながら、いずれも「その後は釣りに集中したから見ていない」と答えたという。

 やはり不自然に思われる根拠を沖縄平和ネットワーク代表の村上有慶氏は本誌にこう語った。染谷氏は、村上氏の乗った抗議船「ラブ子」(プレジャーボート・0.5トン、定員6人)が流されるのを、なずき丸に乗って迎えに行こうとしていたのだ。

「流されたとき、必死で周囲を見回しましたが、釣り人なんていなかった」

 事件後、染谷氏の航海日誌の14年8月から事件当日までのページが、何者かに破られていたことも判明している。

 海上保安庁OBが語る。

「事件・事故の解明が大前提だから解剖しなかったのは不可解です。辺野古で対立関係にあったことが影響したのなら不幸なことだ」

 昨年12月、村上氏ら抗議船仲間は、なずき丸のプロペラへの器物損壊容疑で、告訴状を提出、受理された。真相の解明を待ちたい。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日 2016年3月25日号より抜粋