「『エヴェレスト~』に限らず、どんな作品でも、毎回自分の中にちゃんといい思い出を残せている。そのことが贅沢だなと思います。私の代表作として一般の人が思い浮かべるのは(NHK連続テレビ小説の)『カーネーション』(2011年)かもしれないですけど、私からすれば、どの作品にも同じように転機があって、どの作品にもチャンスがあった。“あの作品があったから、次につながった”と思えるものばかりです」

 芝居欲は高まる一方だが、その欲望の向かう先は、いたってシンプル。知らなかったことをもっと知りたい。想像のつかないような人と出会いたい。新しいことに挑戦したい。“出会い”こそが、すべての原動力になっていると彼女は言う。

「人との出会いは面白いです。共演者でも、監督でも、自分が抱いていたイメージと、全く違う人だったりする。新しい人だけじゃなく、再会した人も、前とは違う部分が見えたりして。人との出会いは常に、私に驚きや発見をくれるんです」

 移動や変化を好む一方、彼女の心に刺激とは違う安らぎのエネルギーをくれるのが、故郷と家族だ。地元の奈良で、河瀬直美監督にスカウトされたのが14歳のとき。高校卒業後に上京し、東京暮らしは15年以上にもなる。自他共に認める“自然児”だ。

結婚して、東京に家族も増えたことだし、都会のコンクリートジャングルにもなじみつつありますね。でもふとした瞬間、“浮いてるなぁ”って感じる自分もいますけど(苦笑)」

週刊朝日  2016年3月18日号