主を失えば、車の暴走は止められない。それなら、車の技術で何とかならないのか。月刊誌「ドライバー」編集部によると、梅田の事故で男性が乗っていたプリウスは、一つ前のモデル。新モデルでは歩行者を認識して衝突回避を支援する「自動ブレーキ機能」が搭載されているという。

「新しいモデルだったら、ここまで悲惨な事故にならなかったかも」(編集部)

 車の安全性には限界がある。突然死を予防することはできないのか。

「とにかく血圧の管理を」

と、一杉教授は言う。

 監察医務院のデータでは、死因の1位が虚血性心疾患、2位が脳血管疾患、3位が大動脈疾患だ。いずれも高血圧がかかわって起こる。一杉教授らの調査でも、同じような結果が出たという。

「運転中は常に緊張を強いられているため、血圧は平均で10程度上がります。高血圧の人だと、さらに血圧が上がり、虚血性心疾患や脳血管疾患のリスクが高まります」(一杉教授)

 発症年齢にも注目したい。突然死が最も多いのは51~60歳で、41~50歳が続く。中年の世代が危ないのだ。脳卒中治療の専門家で東京都済生会中央病院の高木誠院長は言う。

「40~50代の男性には、高血圧と診断されている人が意外と多い。でも、自覚症状がなく、日常の多忙もあって、治療をしていない例が少なくないのです。高血圧を放置すると、この年代でも脳出血や心筋梗塞を発症する。運転中だけでなく、日常的に突然死を起こすリスクを背負っています」

 高い血圧を放置し、ストレスのかかる運転でプチッと血管が切れる……。自身の命だけでなく、まったく関係のない人の命まで奪う危険性を考えたら、日々の血圧コントロールぐらいなんとかしたいものだ。

週刊朝日  2016年3月18日号より抜粋