「トランプ氏は発言でわかるように入り口は極端だが、出口は修正し穏やかに持っていくタイプ。かたや安倍首相は調整型で、入り口で話を聞くが、根は頑固な保守で引かない。トランプ大統領になると、当初の要求は相当強硬なものになるでしょう。安倍首相も粘り強く出るタイプだから交渉はタフになる。日米同盟といっても、ギクシャクする可能性がある」

 ただ強気な発言を真に受けるのはちょっと早いのかもしれない。トランプ氏があえて計算して意図的に発言している節もあるからだ。神戸学院大学の河田潤一教授(政治心理学)によると、歴史の浅い米国は、理念や言葉で一体化し、結束する傾向があるという。

「米大統領は、関西人にとっての阪神タイガースのようなもの。幼少期から一体化する。国を統合させる機能がある」

 トランプ氏の発言内容を読み解くと、次のようなことが見えてくると言う。

「教養がなさそうにみえてバカではない。例えると、政策や人気は商品で、有権者という市場にドラマチックな演出をみせられるタイプ。彼はビジネスでの経験も選挙戦に応用している」(河田教授)

 もっともトランプ氏が移民を跳ね返す「万里の長城」を国境に造るといきり立つメキシコには一時進出を画策。中東にはゴルフ場などを持ち、オイルマネーをがっぽり持つ富裕層のお得意様もわんさといそう。やっぱり発言は支離滅裂だ。

 世界の命運を決める米大統領選の本選まであと8カ月。目が離せそうにない。

(本誌・西岡千史、鳴澤大、牧野めぐみ、松岡かすみ、藤村かおり/岸本貞司)

週刊朝日  2016年3月18日号