日米合同訓練の様子 (c)朝日新聞社
日米合同訓練の様子 (c)朝日新聞社

「イスラム国(IS)は打ち負かす」

 米国大統領選の予備選挙・党員集会が集中した3月1日の「スーパーチューズデー」。共和党では不動産王ドナルド・トランプ氏(69)が11州のうち7州で勝利し、指名争いで頭一つ抜けた。

 歯にきぬ着せぬ物言いで移民は排除、シリア問題は即解決、TPP(環太平洋経済連携協定)は大反対などとぶち上げる。米メディアは「自己陶酔型ガキ大将」などと一斉に攻撃。身内の共和党幹部も「反トランプ基金」をこしらえ、他候補への一本化に乗り出したが、もはや後の祭りだ。

 なぜここまでトランプ氏が善戦しているのか。同志社大学の村田晃嗣教授(米国政治史)はこう解説する。

「これまでの米国政治、社会の中心は、WASP(ワスプ)と称されるアングロサクソン系でキリスト教プロテスタントの白人が占めていた。ところがヒスパニックなど移民が増え、ワスプはマイノリティーになりつつあり、不満や不安が高まっている。さらにオバマ政権下で所得格差が拡大した。トランプ氏は反知性的で感情的で、すべてオバマ氏の逆。オバマじゃなければトランプは出てこなかったかもしれない。いわば低所得低学歴の白人層の憤りが、アンチオバマとなってトランプ票へのうねりになっています」

 米国で「エスタブリッシュメント」と呼ばれる主流派への反発もある。たとえば11月の大統領本選と連邦議員選挙までに、エネルギー産業大手のコーク・インダストリーズ経営者で、政界に隠然たる影響力を持つ大資産家のチャールズ・コーク、デイヴィッド・コーク兄弟が、8億9千万ドル(約1千億円)の選挙資金を投入すると明らかにしている。コーク兄弟を描いた『アメリカの真の支配者 コーク一族』の翻訳者である古村治彦氏は言う。

「コーク兄弟は昨年1月、大富豪たちが集まる会合に、トランプ氏のライバルであるテッド・クルーズ氏やマルコ・ルビオ氏らを呼びました。その後にトランプ氏は、彼らを『(コーク兄弟の)操り人形なのか』と批判。大富豪であるトランプ氏は、大企業やウォール街からの巨額の政治資金を必要とせず、エスタブリッシュメントの意向から自由に政治ができると思われている。それが庶民の心を掴んでいる」

 勢いを増すトランプ氏にさじを投げたのか、コーク兄弟は今後の予備選には関与しない意向だという。

 怖いのは、トランプ氏が大統領になったら劣勢に立たされる同盟国の日本だ。米大統領選の取材経験があるジャーナリストが言う。

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