「10歳は若返ったかも。カミさんと仲が悪いわけでなく休日は一緒に出かけることもあるんです。でもセックスは人形とどうぞってカミさんに言われる(笑)」

 中島さんの“彼女”の里(メーカー)は、来年、創業40周年を迎える業界老舗のオリエント工業(東京都台東区)だ。社長の土屋日出夫さん(72)は言う。

「日本では1956年に南極越冬隊がダッチワイフを連れていったと言われていますが、質が悪く実用的でなかったようです。60年代に空気式が一般に流行し、その後半世紀でドールは飛躍的に進歩を遂げました」

 ソフトビニール、ラテックス、と素材を模索し、2001年に初のシリコーン素材一体型(体がばらばらにならない)ドールを製作。月20~30体の売り上げを約50体に伸ばす転機になった。

「最新のやすらぎというシリーズはモデルの女性を公募し、3Dスキャニングで全身の型取りをしました」

 ドールの購買者の多くが中高年だが、20代もいるという。もともとアダルトグッズショップに勤めていた土屋さんだが、時代とともに人形だけでなく“人”も変化したと話す。

「昔は60歳といえば老人だったが、今は心身が実年齢より20くらい若い人もいる。でも夫婦の性関係が若い時のように続くとは限らず、悩む男性陣は多い」

 同世代の妻とセックスレスになり、我慢する。でもDVDを見ようものなら「ヤらしい」と非難されたりして。

 あっけらかんと性を語る女性が増えたことも問題だ、と土屋さん。

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