「電波停止」発言に踏み込んだ安倍首相と高市総務相 (c)朝日新聞社
「電波停止」発言に踏み込んだ安倍首相と高市総務相 (c)朝日新聞社

 国会で高市総務相が「電波停止を命じる」と恫喝するなど、安倍政権の“テレビ局支配”が強まっている。民放でも政権を批判した看板キャスターらが3月、一斉に降板する。

 2月17日、英ガーディアン紙は「日本のテレビキャスターたちが政治的圧力で職を失う」と題した記事を掲載した。「クローズアップ現代」の国谷裕子氏、「報道ステーション」の古舘伊知郎氏、「NEWS23」の岸井成格(しげただ)氏の3人が、3月に同時に番組を降板することを紹介。さらに、2月8日の衆院予算委員会で高市早苗総務相が、政治的な公平性を欠く放送が繰り返された場合、電波停止を命じる可能性に言及したことも驚きをもって伝えられた。テレビ局幹部は、悔しさをにじませながら言う。

「日本は今や世界の笑い者ですよ。表向きは番組改編期での交代や自主的な降板になっていますが、実態は違う。官邸の意向を忖度(そんたく)した上層部が、政権批判をいとわないキャスターの首を差し出した」

 中でも岸井氏は2013年成立の特定秘密保護法で安倍政権を厳しく批判し、15年の安保関連法案の可決直前にも「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と番組で主張した。勇気ある発言と称賛された一方で、右派論客からは放送法第4条が定める「政治的に公平であること」に違反していると、批判された。

 昨年11月には、任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」(以下、視聴者の会)が、読売新聞と産経新聞に1ページ全面の意見広告を掲載。そこでは、岸井氏を名指しで「放送法第4条の規定に対する重大な違反行為」と批判した。

 TBS関係者が岸井氏の降板の内幕をこう話す。

「安保法制で岸井さんの政権批判のボルテージが上がった昨夏ごろから、上層部は本人に何も相談せず、後任のキャスター選びを水面下で進めていました。それが秋ごろ、岸井さんの耳にも入り、本人はとてもショックを受けていた。降板の表向きの説明は『NEWS23』の視聴率低迷ですが、うちの朝の番組、『あさチャン!』『白熱ライブ ビビット』の低迷のほうがひどく、立て直しが急務だったはずなのに……」

 視聴者の会が安倍首相を応援する論客を中心に構成されていることも、臆測を呼んだ。

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