「理事会は大荒れでしたよ。土地購入の手続きに問題がある、コンプライアンスに抵触すると、ある理事が言うと、『どこが問題だ』と籾井会長の怒声が響き渡った。賛成したのは籾井会長ともう一人でした。土地購入計画を推進してきた理事までが反対にまわった」

 と理事会の様子を知るNHK幹部は振り返る。

 そして同日の経営委は紛糾。12月11日には高市早苗総務相が「NHK執行部は経営委に丁寧に説明し、視聴者への説明責任を果たしてほしい」と述べるなど執行部を批判。結局、籾井会長は土地購入を断念、12月22日の経営委で最終的に了承された予算案では当初の7016億円に戻され、6979億円は“幻の予算案”となったのだ。

 1月13日の国会で、土地購入問題を追及された籾井会長は「契約に向けた具体的な手続きにさえ入っておりません。具体的な計画を検討する前の段階であり、特に問題はないと考えております」と答弁した。

 だが、土地購入を見込んだ修正予算を理事会でいったんは了承させたはず。理屈が合わないのではないか。

「土地購入を前提とした予算案まで作って、理事会では議決された。籾井会長は具体的な手続きに入っていないというが、入っていますよ。幻の予算案が表に出れば、国会での偽証に問われかねません」(NHK幹部)

 NHK広報局は本誌の取材に対し、あっさり事実をこう認めた。

「関連団体による土地購入を盛り込んで見直しした予算案を12月8日の理事会で審議しましたが、最終的に土地購入が取りやめになったため、(もとの予算を)12月22日の経営委員会に諮りました」

(取材班 今西憲之、本誌・長倉克枝、西岡千史)

週刊朝日  2016年3月4日号より抜粋