「納得いきません。大人である担任はひどいことをしても、子どもにごめんなさいとは言わないんですか」

■学校側は否定「事実でない」

 学校側は期限が過ぎた今も、退学処分にはせず、しかし登校も認めないという姿勢を続けている。義務教育を受けられないという異常事態を知った丸亀市教委が10月、特例として地元の公立小学校での受け入れを決定。男児は今、こちらに通学している。だが、弁護士によると、学籍を移せていないため、このままだと小学校卒業が認定されない可能性があるという。

 母親によれば、問題となった担任教師はベテランで、入学式では「ノートルダム清心女子大を卒業し、30年間この小学校に勤めています」と自己紹介していたという。いったいなぜ、この男児を「特別扱い」したのか。

「息子ははっきりモノを言う子です。入学直後の5月ごろ、息子の帽子が風で飛ばされたとき、担任が『また買えば』と言ったそうです。息子は『買えば済むという言い方はおかしい』と言い返したらしく、それが嫌われるきっかけになったかもしれません」(母親)

 校長に事実関係や理由を尋ねる質問状を送ったところ、文書で回答があった。

「(母親の主張は)事実ではありません。保護者から他校へ転校するとの申し出があり、その手続き中だったところ、保護者から転校理由として退学処分をされたこととするからと言って退学処分を求めてこられた事実があります。申し出を断ると、転学を翻意して当校に通学させるとの連絡があり、本校としてはこれを受け容れるべく、子どもさんが1日でも早く就学できるよう必要な対応をしてきました」

 学校から一方的に転学願を渡されたという母親の主張とは大きく食い違っている。校長はその後の電話で「ご指摘の点について誠実に調査したい」と話した。

 渡辺理事長は自著でキリストの愛に基づき、「嫌いな相手でも大切にする、否定しない、価値を認めることをやめてはいけないのです」などと書いている。置かれた場所で咲こうにも咲けない幼子がすぐそばにいることを、どう思っているのか。渡辺理事長にも見解を求めたが、期日までに回答はなかった。

(ライター・秋山千佳)

週刊朝日 2016年2月26日号