林:私、原作の漫画、読んだことないんですよ。

坂東:僕は子どものころからずっと読んでいたから、原作のファンから「あんなのゾロじゃない」「ボン・クレーじゃない」と言われるのが一番いやだったんですね。舞台のストーリー展開やセリフは原作とは違いますが、その分、「スキあらば原作と一言一句同じセリフを言ってやろう」と思って、漫画を読み返しました。原作を知ってる人は、喜んでくれますから。

林:そうなんですか。

坂東:僕らがふだん古典をやるときには、先輩のお芝居を見て、教わって、それに忠実にやろうとするんですが、それと一緒ですね。原作のキャラクターを先輩に見立てて、できるだけそのとおりにやろうと。

林:次は大阪と博多でもやるんですよね。

坂東:3月に大阪の松竹座で、4月に博多座で、それぞれ1カ月やります。

林:東京公演、最後のほうはもうチケットが取れなくて、私の知り合いは「大阪まで見に行こうかな」と言ってましたよ。

坂東:そうだったみたいですね。ありがたいことです。

林:お父さまの三津五郎さんはじめ、歌舞伎界のスターが次々に亡くなられたときには「これからどうなっちゃうんだろう」と思いましたけど、若い方たちがこうして新しい舞台を作り出していくんですね。「ワンピース」でスーパー歌舞伎の集大成を見た感じがしましたよ。このご活躍、お父さまがご覧になったらお喜びになるでしょうね。

坂東:どうでしょう。実際に見てもらわないことにはなんとも言えませんが、いろいろやらせていただけるのはありがたいことですね。

週刊朝日 2016年2月26日号より抜粋