鶴保:今の若い方は、中選挙区制時代の議員に「先生方は自民党同士で戦ったそうですね。信じられません」と言うんですよね。自民党の中で戦っているという感じがわからないんじゃないですか。

古賀:最初からつくしの坊やみたいにすすっと出てきて苦労もないし、自民党という看板で選挙をやって、政策もない、そういう若い人はやっぱりつくしの坊やだからすぐにへたってしまう。そういう人が圧倒的多数になっているんじゃないかな。

鶴保:政策論争をして党内で優劣がついて「あいつは俺とは考え方が違うんだ」というものを包含する温かみが減ってきた気がするんです。政策論争をする対立軸をつくるのに総裁選をする野田先生の気持ちはわかるんですが、「あなたはいいが、応援するわれわれは大変な目にあう覚悟をしないといけない」という感じが若い人の中にはやっぱりある。「お前は向こうの候補者を応援するからだめだ」ではなく「中にもこんないいやつがいるからちょっと上げてやろう」という懐の広さが昔の自民党にはあったのかと思うんです。

古賀:鶴保さんの話を聞いていると、そんなに恐ろしいものなのかね。

鶴保:そう若い人は思っていると思いますよ。

古賀:安倍さんは懐が広いと思うよ。若い人たちは、自分たちが苦労せず勉強が足りないことを棚に上げて、勝手に思っているだけだと僕は思うけれどね。

野田:総裁選のあと、「野田聖子は干される」とか言われましたけど、私が災害対策委員長になると、若手議員が来て「官邸に対してモノを言うと干されると思っていたんで黙っていたんですけれど、野田さんはあそこまでやっても委員長になれるんなら、これからはモノを言います」と言う。はあ?と。けっこうそういう人がいるんです。

古賀:自分で勝手に、安倍さんに刃向かうことはいけないことなんだと思っている。やっぱり試練と修羅場を経ていないから。

鶴保:今までの自民党のやり方でも、党内の部会で決まったものが総務会なりに上がってくるんですが、そこでみんな思考停止しているんですよ。そこに出ている議員が部会の全部を知っているわけじゃないし、めんどくさいし、考えるのやめようと。もっと根深い問題のような気がする。

(構成 本誌・長倉克枝、上田耕司)

週刊朝日 2016年2月26日号より抜粋