2年半ぶりの運転席。カメラをつけたバンドが少しきつくて、ハンドル操作に影響したのかも(撮影/倉田貴志)
2年半ぶりの運転席。カメラをつけたバンドが少しきつくて、ハンドル操作に影響したのかも(撮影/倉田貴志)

 認知症早期治療を始めて3年目に入った認知症早期治療実体験ルポ「ボケてたまるか!」の筆者・山本朋史記者。デイケアでの週1回のトレーニングは休まずに続けている。もの忘れは少し減った。そんなMCI(軽度認知障害)当事者の山本記者に高齢者運転実験の要請が舞い込んだという。

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 会場では、まず何度かテレビでご一緒した日本認知症予防学会理事長の浦上克哉・鳥取大学医学部教授が監修したもの忘れ相談プログラム、TDASプログラムでチェックを受けた。パソコンの前に座ってプログラムから出てくる言葉を聞きながら、問題を解いていく。MMSEなどの認知機能テストの自動音声版だ。テレビカメラが後ろで回っていて集中できない。

 最初の簡単なプログラムで三つの言葉を覚えるところで失敗した。うめ、いぬ、じどうしゃという言葉の「うめ」をどういうわけか「きく」と間違えた。同じ花の名前ではあるけれど。コワイ。点数は即座に打ち出される。成績は15点満点で13点だった。

 参加者は84歳を筆頭に70歳代が3人。63歳のぼくがいちばん若い。隣の84歳のMさん(弁理士)の点数を盗み見る。15点の満点。また落ち込んだ。

 続いて東京工業大学大学院の鈴木美緒・助教の簡単なインタビュー。ぼくは何か一つ失敗するとパニックに陥ることについて話した。逆走したり、ブレーキとアクセルを踏み間違える人の気持ちは理解できる、自分も混乱してそういう事態を招きそうで運転を控えていると述べた。

 このインタビューを受けている間に神奈川県座間市にある自動車教習所のテストコースでは、ほかの4人の運転実験が始まっていた。ぼくの順番は最後だという。緊張は高まる。

 外に出て、仲間の運転を見る。普段、車を動かしている人たちは難なくこなしているように見えた。ただ、後で聞くと最高齢のMさんは緊張したのか、S字カーブなどで2度ほど縁石に乗り上げたそうだ。

 運転を終えたYさんがぼくを脅かす。

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