導入期の自動運転車で事故が起きた場合、「運転者の責任を定めた道路交通法に則り、事故の際にはドライバーが責任を持つ枠組みで開発を進める」(トヨタ)というように自動車メーカーは責任を取らないことが予想されている。

 だが、ロボットの安全性問題に詳しい小林正啓弁護士は、ことはそう単純ではないと見る。

「例えばドライバーが危険に気づいて左にハンドルを切ろうとしたが、人工知能は右と判断し、結局直進して事故が起きた場合は誰がどの程度の責任を負うのか。賠償の過程を考えると非常に複雑なことになる」

 事故が起きた際の責任の所在が、自動車メーカー、人工知能のプログラムを作った会社、ドライバーの誰にあるのか判然としないためだ。

 前出の高山氏もこう言う。

交通事故の民事訴訟で加害者と被害者の過失割合を決める際には、過去の事故統計を基にした6千ものパターンを参考に判断していきます。それだけでも非常にデリケートな作業なのに、判例がほとんどない自動運転車の事故となると、いったいどうするのか……」

 仮に自動車メーカーに責任追及の矛先が向いたとき、メーカーはどうするのか。

「自動運転車の事故の原因が走行プログラムのバグなどに起因するときはPL法(製造物責任法)で対応しようと考えています。それ用のPL保険を損保会社が作ることを期待しています」(自動車担当記者)

次のページ