「殿、利息でござる!」ポスター(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会
「殿、利息でござる!」ポスター(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

 フィギュアスケーターのプリンス“ゆず様”こと羽生結弦選手が、5月14日に全国公開される歴史娯楽映画「殿、利息でござる!」(監督・中村義洋)で銀幕デビューする。原作は磯田道史氏の『無私の日本人』の一編「穀田屋十三郎」で、仙台藩の宿場町が舞台だ。阿部サダヲほか瑛太、妻夫木聡など多彩なキャストの中、羽生選手は殿様を演じる。

 中村監督によれば、豪華キャストたちが「殿」と仰ぐような俳優が見当たらない中で、思いついたのがスケート界の頂点に君臨し、かつ宮城出身の羽生選手。羽生選手はオファーを快諾したが、撮影に入ると戸惑ったようだ。

「お芝居はスケートと違って振りがなく、言葉を使い、セリフに合わせて動かなければいけないので難しい」

 だがそこは並外れた度胸でクリア。撮影時(昨年夏)は暑かったが袴姿で頑張り、スケートにもよい影響を与えたと本人が明かしている。

「試合のプログラムだけではなくエキシビション、ショーなどでも表現者として今回の貴重な経験を生かすことができたのではないかと思っています」(羽生選手)

 その言葉どおり、撮影後に行われたNHK杯(11月)とGPファイナル(12月)で、“異次元の演技”を披露して歴代最高得点を出しているのだ。映画の専門家はどう見るのか。評論家の成馬零一さんに聞くと、

「中村監督は『予告犯』や『残穢(ざんえ)』など次々と話題作やヒット作を出す邦画の注目株。その監督が圧倒的ビジュアルの羽生くんをどう撮ったか興味深い」とし、「本業が忙しいだろうけど、激しく動く演技もいずれ見たい」と新人俳優の今後に期待を寄せた。

 ちなみに映画用の写真を見たファンの中には「まげが似合いすぎて前から殿様だった気がしてきた」と言う人もいれば、「笑った、なんでだ」と、のけぞる人も――。銀幕ではスベラないでね。

週刊朝日  2016年2月19日号