震災や原発、戦争や社会問題について、文学者の立場から積極的に発言を続ける作家の高橋源一郎さん。同じく作家・林真理子さんとの対談で、SEALDsとの共著誕生の裏側を語った。
* * *
林:高橋さんはSEALDsの学生さんたちとの共著(『民主主義ってなんだ?』)も出されましたね。
高橋:リーダーの奥田愛基君が僕のゼミに来ていたので、その縁です。出版社から話があったのが7月末、9月には書店に本が並んでましたね。
林:すごいスピード。奥田君、すっかり時の人ですね。
高橋:そういう時期だったってことですね。SEALDsの子たちと話をすると、とてもセンスがいいんです。本もよく読んでるし。
林:発言を読んでいても、自然体でいいですね。
高橋:そうそう。ひと昔前だと、学生運動やってる子ってイデオロギッシュだったり、頭でっかちだったり、ガードが固かったりしたんだけど、20歳そこそこであの自然体はすごいな。
林:(瀬戸内)寂聴先生が「高橋源一郎さんがSEALDsの学生の話を聞いて助言する姿がとてもよい。ベ平連を指導した小田実さんを思い出した」とどこかでおっしゃってましたよ。
高橋:僕は小田さんとは直接やり取りはなかったんですが、学生のころ、小田さんの活動を見ながら、「親切だな。よく学生の面倒なんか見るよな」って思ってました。そうしたら、何十年かたって自分がその役回りになってきた。諸先輩方への、恩返しですね。
林:かつて高橋さんは学生運動で拘置所に入って、そこでありとあらゆる本を読んで、語学もマスターしたんでしょう? 大杉栄みたい。英語はもちろん、ドイツ語やロシア語も。
高橋:ドイツ語もロシア語も、辞書を引きながらなら、なんとか。拘置所に入ると本を読むぐらいしかやることがないから、語学を学びたいときは、捕まるといい(笑)。この間、水道橋博士と公開対談やったんです。水道橋さんはすごい読書家なんだけど、いつか捕まったときのための特別な本棚があるって。「それはいい心がけだ」と言いました(笑)。
林:高橋さんは、どのぐらい入っていたんですか。
高橋:拘置所は、8カ月ぐらいですね。
林:長いですね。でも、元全共闘の人たち、なんでいま何にも言わないんだろう。ケンカのやり方だってわかってるはずだし、時間もあるはずなのに。
高橋:おとなしくなっちゃった人はいますね。でも守るものもあるし、面倒なんじゃないですか。僕の友達も、僕が国会前に行ったって聞いても、「うん、気持ちはわかる」でおしまいだったりするし。
※週刊朝日 2016年2月12日号より抜粋