作家高橋源一郎たかはし・げんいちろう/1951年生まれ。明治学院大学国際学部教授。横浜国立大学経済学部中退。81年、『さようなら、ギャングたち』で群像新人長編小説賞優秀作。88年、『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞。2002年、『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞。12年、『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎潤一郎賞。近著に『デビュー作を書くための超「小説」教室』『ぼくらの民主主義なんだぜ』、『民主主義ってなんだ?』(SEALDsとの共著)がある(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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作家
高橋源一郎
たかはし・げんいちろう/1951年生まれ。明治学院大学国際学部教授。横浜国立大学経済学部中退。81年、『さようなら、ギャングたち』で群像新人長編小説賞優秀作。88年、『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞。2002年、『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞。12年、『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎潤一郎賞。近著に『デビュー作を書くための超「小説」教室』『ぼくらの民主主義なんだぜ』、『民主主義ってなんだ?』(SEALDsとの共著)がある(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 震災や原発、戦争や社会問題について、文学者の立場から積極的に発言を続ける作家の高橋源一郎さん。同じく作家・林真理子さんとの対談で、SEALDsとの共著誕生の裏側を語った。

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林:高橋さんはSEALDsの学生さんたちとの共著(『民主主義ってなんだ?』)も出されましたね。

高橋:リーダーの奥田愛基君が僕のゼミに来ていたので、その縁です。出版社から話があったのが7月末、9月には書店に本が並んでましたね。

林:すごいスピード。奥田君、すっかり時の人ですね。

高橋:そういう時期だったってことですね。SEALDsの子たちと話をすると、とてもセンスがいいんです。本もよく読んでるし。

林:発言を読んでいても、自然体でいいですね。

高橋:そうそう。ひと昔前だと、学生運動やってる子ってイデオロギッシュだったり、頭でっかちだったり、ガードが固かったりしたんだけど、20歳そこそこであの自然体はすごいな。

林:(瀬戸内)寂聴先生が「高橋源一郎さんがSEALDsの学生の話を聞いて助言する姿がとてもよい。ベ平連を指導した小田実さんを思い出した」とどこかでおっしゃってましたよ。

高橋:僕は小田さんとは直接やり取りはなかったんですが、学生のころ、小田さんの活動を見ながら、「親切だな。よく学生の面倒なんか見るよな」って思ってました。そうしたら、何十年かたって自分がその役回りになってきた。諸先輩方への、恩返しですね。

林:かつて高橋さんは学生運動で拘置所に入って、そこでありとあらゆる本を読んで、語学もマスターしたんでしょう? 大杉栄みたい。英語はもちろん、ドイツ語やロシア語も。

高橋:ドイツ語もロシア語も、辞書を引きながらなら、なんとか。拘置所に入ると本を読むぐらいしかやることがないから、語学を学びたいときは、捕まるといい(笑)。この間、水道橋博士と公開対談やったんです。水道橋さんはすごい読書家なんだけど、いつか捕まったときのための特別な本棚があるって。「それはいい心がけだ」と言いました(笑)。

林:高橋さんは、どのぐらい入っていたんですか。

高橋:拘置所は、8カ月ぐらいですね。

林:長いですね。でも、元全共闘の人たち、なんでいま何にも言わないんだろう。ケンカのやり方だってわかってるはずだし、時間もあるはずなのに。

高橋:おとなしくなっちゃった人はいますね。でも守るものもあるし、面倒なんじゃないですか。僕の友達も、僕が国会前に行ったって聞いても、「うん、気持ちはわかる」でおしまいだったりするし。

週刊朝日 2016年2月12日号より抜粋