なお、診断の結果、年相応の物忘れだった場合にも、1年に1度、定期的な受診をすすめている。ある段階においては、年相応の物忘れ、MCI、そしてアルツハイマー型認知症を判別することが難しい。そのため、時間をかけて認知機能の経過をみていくことが大切だ。

 一方、MCIであってもその状態を10年以上維持できているケースは少なくない。また、MCIから健常な認知機能まで戻る人も10%程度いることがわかっている。

「だからこそ、異変に気づいたら早期に受診することが大切です。MCIの状態を維持、あるいはMCIの状態から認知機能を回復したという人の多くが、認知症の予防につながる生活習慣を身につけています」(須貝医師)

 東京都在住の西健一郎さん(仮名・85歳)は10年前に浴風会病院で集団検診を受けたところ、MMSEでは26点でMCIのレベルだった。MMSEでは「今日は何日ですか」「ここは何県ですか」など、大きく11の質問内容があり、正常老化の範囲であれば満点(30点)、認知症の場合、通常23点以下だ。この正常老化と認知症の間がMCIとなる。

 その後、健康管理と認知症の予防対策としてテニスを始めた西さん。テニスはまったくの初心者だったが、そのおもしろさに夢中に。連日、テニスで汗を流す生活になった。

 このような生活が認知機能にどのくらい寄与しているかはわからないものの、西さんは現在までMCIの状態を維持ができ、日常生活にも支障はないという。

 テニスに限らず、認知症予防の生活習慣の中で運動は最も有効性が高いとされている。特によいとされているのが有酸素運動だ。運動の次に有効な対策として頭を鍛えることやバランスのよい食事があげられている。

週刊朝日 2016年2月12日号より抜粋