そんな時代を前に、忘れてはならない課題も浮かぶ。子どもたちの教育だ。東京大学大学院情報学環の山内祐平教授はこうみる。

「近代型の学校ができたのは産業革命以降。工場労働で読み書きできる人が必要になり、雇用とのマッチングで学校教育制度ができた。ところが今はそのときと同規模の大変動が起きている。学校教育はすぐには変われない。10年間は非常に難しい端境期となる」

「端境期の世代」とはつまり今学校に通う子たちだが、どうすればいいのか。実は現在進んでいる「センター試験の廃止」や「アクティブラーニング」などは、情報化やAIで変質する雇用に合わせた改革の一環だという。

「知識のうえに創造性やコミュニケーション能力、情報リテラシーなどが学校教育で必要となる。文部科学省などもそれに気付き、手を打ち始めました。いずれ一生のうちに何回か仕事を変える時代が来る。つまり学び続けないといけない。親は英会話でもいい、まず学ぶ姿を子どもに見せることが有効です」(山内氏)

 また高校、大学時代に留学し、日本の価値観や社会を一度、相対化する機会を持つことも役立つようだ。AI時代を生き抜く学習は、独学は困難。企業などが開く勉強会に積極的に飛び込み、多世代のつながりをつくるのも効果的という。

 いずれにせよ、AIが職場のライバルや同僚となる時代が到来する。

(本誌・鳴澤 大、長倉克枝)

週刊朝日 2016年2月12日号