「ディープラーニングの登場で、今までのコンピューターではなかなか越えられなかった山をAIが越えられた。それで堰を切ったようにすごい勢いで技術が進化している状況です」

 最も大きいのは、画像を認識して見分ける力だ。

「一見似ているように見えるものでも、その違いを見分けるのが知能の本質」(松尾氏)

 そもそも人間とAIの差もここにあった。ところが昨年2月、米マイクロソフトが開発した画像認識システムが人間の認識能力を超える結果を発表。翌月には米グーグルがさらに上を行く精度をたたき出した。

 驚愕の進化はまだある。人の言語をAIが理解でき始めたとする研究成果が最近、学会で報告されたという。

「技術的には人間の言語を理解する最初のところまで来ています。時間がかかると思われていた段階だが、めちゃくちゃ早い」(同)

 そして、その先にあるのは「自動翻訳」だ。

 なんのことやらだが、要するに「ドラえもんの道具でいう『ほんやくコンニャク』」で、外国語との言葉の壁が下がるということ。今でもネット上にお手軽な外国語の翻訳サイトはあるが、文字を記号と認識して処理するレベルのため、実際に使うとなんだかわからぬ日本語訳が出てくる。これが正確になり、意訳さえできる技術といえる。

「例えば弁護士も海外の弁護士と戦わなければいけなくなる。教育機関も医療機関もです。国と国の相互作用も始まり、日本語や国境に守られ競争力を保ってきた職業が海外の同業者と競うことになる」(同)

(本誌・鳴澤 大、長倉克枝)

週刊朝日 2016年2月12日号より抜粋