ドラえもんの道具でいう「ほんやくコンニャク」を実現?(※イメージ)
ドラえもんの道具でいう「ほんやくコンニャク」を実現?(※イメージ)

 大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒研究室──。

 マツコ・デラックスさんと共演した「マツコロイド」や高島屋大阪店で働いたアンドロイド店員「ミナミちゃん」を手がけたロボット博士の石黒浩教授の拠点だ。1月下旬、見学会があり、記者も参加した。

 まず見学者が招かれた部屋の奥には、かしこまった女性がひとり。噂のアンドロイドだ。案内役の学生が見学者に「近寄って」と声をかけるが、なぜか距離を詰める人は少ない。

 人間のように顔の向きや表情を変え、たまに見つめてくる。あまりにスムーズで不思議な感じもする。男性参加者がその手に触れると、女性が「触ったらあかんで」と叱りつけた。

 研究室によると、これまではAIも活用しながら遠隔操作型アンドロイドを手がけたが、昨年には対話可能な自律型アンドロイドも開発。人間のようにしぐさを滑らかにし、また人間社会で共存できるよう、骨格も人間と同じだ。その力も「ターミネーター」のような馬鹿力ではなく、空気圧を使ったマイルドなパワーを持つアンドロイド開発を進めている。大阪府吹田市から来た男性(63)は「本当に人間みたいだった」と感心しきりだった。

 最後に紹介するのは石黒教授の言葉だ。こう予想してくれた。

「メディアはAIのプラス面もマイナス面も言いすぎ。仕事が減る歴史は今始まった話ではない。社会が成熟し、技術が発展すると、人力に頼る場所は減り、人口減でも仕事が減る。それで社会が悪化したら別だが、人間はそこまでバカではない。AIとロボットの進展で、より小さなエネルギーで生産もできる。未来は働くために生きる、ではなく、学ぶために生きる時代が来る」

 それにしても一体なぜここまでAIが人間の仕事を奪うほど進化を遂げたのか。そのキーワードは「ディープラーニング」。12年に登場したコンピューターの「計算方法」の一つだが、この方法による研究成果が次々表に出てきた。AI研究の第一人者、松尾豊・東京大学特任准教授もこれには驚きを隠さない。

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