物価上昇率2%の達成に必至な黒田東彦日銀総裁 (c)朝日新聞社
物価上昇率2%の達成に必至な黒田東彦日銀総裁 (c)朝日新聞社

 安倍晋三首相の盟友、甘利明・前経済再生相の電撃辞任は、無敵だった政権の屋台骨を揺るがす一大事となった。辞任直後、日本銀行が「マイナス金利」という“禁じ手”に踏み切ったにもかかわらず、株価は乱高下。TPPの行方も混沌としてきた。今後の政局の行方は──。

 株価が下がり続けていた1月下旬、都内の証券会社で働くストラテジストのもとには海外のヘッジファンドからの問い合わせが殺到していた。当然、株価の行方かと思いきや……、

「それが甘利大臣についてなんだよ。甘利さんが辞めた場合、アベノミクスの進捗(しんちょく)は問題ないのか、安倍さんの長期政権は続くのかってね」

 それだけ甘利氏の安倍政権での功績が大きかったということだろう。甘利氏はTPP交渉に、マイナンバー導入に、そして、経済界に働きかけて2年連続で2%以上の賃上げを実現した功労者と言われている。

 だが、1月21日発売の週刊文春に違法献金疑惑を報じられ、「政治とカネ」の問題に耐えきれずに辞任。それから一夜明けた29日午前の日経平均株価は若干下げたが、影響は軽微だった。

「辞任したといってもTPPは大筋合意しているし、そのほかの経済政策も軌道に乗っている。辞任しても政策がなくなるわけじゃない」(冒頭のストラテジスト)

 29日は奇遇にも日本銀行の金融政策が発表される日だった。だが今回、市場関係者の多くは追加の金融緩和はないと見ていたと言っていいだろう。そこに、まさかのマイナス金利導入の発表だ。マイナス金利は欧州ではすでに導入されているが、日本では史上初。

次のページ