「もともとは不動産のディベロッパーだったが、約20年前、数億円の借金を背負った。4度結婚していて、転々とし、右翼団体にも属したことがあった。非常に警戒心が強く、ダーティーなカネを扱うわけだから、自分がネコババしたと疑われないように、記録は徹底して残していた」(I氏の知人)

 甘利氏はURへの口利き疑惑について、まったく把握しておらず報道で初めて知った、と弁明している。だが辞任直後、甘利氏の秘書とURの職員が13年6月以降、居酒屋での接待を含め12回にわたって面談していたことが明らかになった。

 しかも、URは幹線道路建設に伴う移転補償金としてS社に2億3千万円も支払ったが、その額が適正かどうか、会計検査院が調査を開始したのだ。

 その後もS社とURのトラブルは解決せず、幹線道路は未完成のままだ。

「地元の自民党市議や県議も手を出さない曰(いわ)くつきの案件だった」(民主党の山井和則衆院議員)

 甘利氏の金銭授受疑惑はこのまま、幕引きとされるのか。元検事の郷原信郎弁護士はこう指摘する。

「甘利氏は安倍政権の重要閣僚です。民営化や理事長人事への同意などに関連して、URに対する『議員の権限に基づく影響力』があります。2度にわたって直接相談を受け、計100万円を受領したことも認めている甘利氏が、S社への補償金の支払いに関し、自らか秘書を通じてUR側に何らかの働きかけをしていれば、あっせん利得罪に該当する可能性があります」

 立件されれば、国会議員としては初のケースとなる。

(本誌取材班=西岡千史、上田耕司、亀井洋志、牧野めぐみ)

週刊朝日 2016年2月12日号