「『談ス』は、ストックホルム、ベルギー、日本と、3人であちこち移動しながら、行きあたりばったりで生み出されたものなんですけど、それも悪くなかったな、と(笑)」(※イメージ)
「『談ス』は、ストックホルム、ベルギー、日本と、3人であちこち移動しながら、行きあたりばったりで生み出されたものなんですけど、それも悪くなかったな、と(笑)」(※イメージ)

 不純物や異物、不確定なもの――。デジタル化が加速する中、そういったものが排除されがちな世の中に、森山未來さんは違和感を覚えることがあるという。

「ある日、動画サイトで、たとえば“コーヒーに砂糖を溶かす”みたいなありふれた現象を、数式と化学式で端的に表す映像作品を見たことがあって……。化学式や数式を美しいと感じつつも、ゾッとしたんです。現象の簡略化というのはある種の決め付けで、現実にはそこに不純物や異物が挟まっているかもしれない。それを化学や数学は排除してしまう。町が整備されて、路地裏が消えていって、自分の周りにある空間がすべて奇麗なもので埋め尽くされてしまったら、そんな空間は居心地が悪いし、嘘臭いだろうと僕は思うんです」

 文化交流使として13年秋から1年間、イスラエルのダンスカンパニーを拠点に活動した。その間、スウェーデンを拠点に活躍する大植真太郎さんと、海外でも評価の高い平原慎太郎さんと3人で、「談ス」というパフォーマンスアートを作り上げ、この3月に全国を回る。作品のテーマを相談していたときに、“異物や不確定なものとの向き合い方”に話が及んだそうだが、「談ス」という肉体同士のぶつかり合いによるコミュニケーションは、その瞬間瞬間で生まれる偶然や不確定要素に溢れ、到底簡略化できるものではない。

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