共産党の田村智子議員から「受け取りをなぜ否定しないのか」と問われると、甘利氏は狼狽、しどろもどろに。こうまで脅える理由は、S社が証拠として、週刊文春に提供した50時間超の録音データのようだ。

「秘書から、S社の社長が私の熱烈なファンだから、という連絡があった。3、4人が最初に大臣室に来られた。そのときの録音があると。文春によると数十時間。ちょっと衝撃を受けた……」(甘利氏)

 田村議員が呆れる。

「トラブル案件を抱えるS社が何の依頼で来ているのか、国会議員ならばわからないはずがありません」

 少なくとも、甘利氏が直接、受け取ったとされる金銭については調査せずとも説明は可能なはず。民主党国対委員長の高木義明氏が政局を見据える。

「疑惑追及の特命チームを設置し、真相の解明に力を注いでいく」

 一方で告発したS社側もかなり周到だ。小まめに録音していたこともそうだが、50万円のピン札を手渡す前にコピーまでしている。秘書らのたかり体質を見透かしたか。

 甘利氏の関係者の一人がこう囁く。

「いまの第一秘書はとにかく夜のお店大好きで、誘われるとひょいひょい行くヤツ。秘書の中でも信用度は低い。ピン札は連番になるから足がつきやすい。ダーティーな献金をピン札でするなんてあり得ない。それを安易に受け取るなんて何もわかっていないし、甘利さんも脇が甘過ぎる」

 では、疑惑のキーマンであるS社の総務担当者とはどんな人物なのか? その知人がこう証言する。

「マンションのオーナーを名乗り、クラブでドンペリを開けていて羽振りがいいかと思えば、事業に失敗して数億円の借金を抱えるなど海千山千の人物です」

 大学教授らのグループが、政治資金規正法違反容疑で甘利氏が代表を務める政党支部などの会計責任者らについて、東京地検特捜部に刑事告発することを検討しているという。

「特捜部も関心を示しており、違法性があるか、白黒つけたいようです」(司法関係者)

 2月4日にはニュージーランドでTPPの署名式が控える。疑惑を抱えたまま甘利氏が出席し、世界に恥を晒すようなことにならなければよいのだが……。

(本誌取材班=牧野めぐみ、上田耕司、亀井洋志、山内リカ、松岡かすみ/今西憲之、岸本貞司)

週刊朝日  2016年2月5日号