撮影のときも、インタビューのときも、全体に漂う雰囲気は“動”よりも“静”。子供時代のことを聞くと、「学校では廊下の隅っこを歩いていました。今も喫茶店では隅の席を選ぶし、舞台のカーテンコールのときも、端にいたいほうです」と言った。

「でも、この間ふと気づいたんです。そういう自分が自意識過剰だったんだな、って。“目立ちたくない”と過剰に意識してたってことは、反動として心のどこかに“注目されたい”という気持ちがあったんでしょうね」

 二枚目のような三枚目のような。受動のような能動のような。陰のような陽のような。いい意味での掴みどころのなさは、役者としての最高の天分なのかもしれない。

 今の目標は長く役者を続けることだが、人としては、「もっと人に優しくなりたい」と思っている。

「僕がこれまで芝居を通して出会った人生の先輩方が、揃いも揃って優しかったんです。『角が取れて丸くなっただけだ』なんて謙遜する方も多いけれど、僕はまだそういう境地に至れそうにない(苦笑)。50代とか60代のときは、いろんな人を許容できる心の余裕を持っていたいです」

週刊朝日 2016年1月29日号