「おばこ」は社会風刺の芝居(※イメージ)
「おばこ」は社会風刺の芝居(※イメージ)

 流されそうになったときや、挫けそうになったときはいつも、16歳のときの自分を思い出す。

「高校1年生のとき、『ガラスの動物園』という舞台を見て、自分も芝居がやりたいと猛烈に思いました。山形の田舎で生まれ育った私に、芝居は、経験したことのないような幸福をくれた。それで、“高校を卒業したら上京して、自分の芝居で人を幸せにしよう”と決意したんです」

 上京して40年以上が経った今も、作、演出、出演の3役をこなす舞台を、年に1本は必ず上演している。

「私が作・演出する舞台は、過激だし、シュールなものが多いんです。そういう芝居を好きだと言ってくださる人は少数派かもしれないけれど、そんな人たちのためにあと10年、70歳になるまでは頑張りたい。70歳で、作・演出に出演までする人って、日本ではまだ誰もいないんです。私の作る舞台はまったく儲からなくて、出演してくださる方も手弁当だったりして大変ですけど(苦笑)、拝金主義には負けたくないので」

 とはいえ、人を巻き込んでいくためには、世間で評価される必要があることを経験から学んでもいる。そのため、映像の仕事や商業演劇にも意欲的に取り組む。2月に上演される「おばこ」は、渡辺えりさんにとって初の三越劇場での芝居となる。

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