そうなんだ。長男ザックは現在学校に通うようになった。次男のイライジャは幼稚園で、毎日午後3時に2人を迎えにいくのが日課だよ。子どもたちを心から愛しているんだ。彼らが小さかったときは、どこへでも一緒に連れていったんだが、学校に通うようになってそれができなくなった。僕が仕事で海外へ行くときは、(パートナーの)デヴィッドがここ(ロンドン)で子どもたちの世話をする。毎日、連絡はとりあっているが、どこにいても子どもたちに会いたくてしようがないよ。確かに僕の生活は大きく変わった。引退するという噂があるが嘘だよ。今は仕事が楽しくてしようがないから、引退するつもりはまったくない。今のところ、ぜんぜん考えていない。生活は子どもを中心にまわっていて、学校の休みを中心にスケジュールを入れているんだ。

──近年は才能ある若手の育成にも情熱を注ぎ、時間を割いているようですね。

 マネジメント会社を経営しているので、現在の音楽シーンを理解するのは大切なことなんだ。そんな理由がなくても、僕は新しい音楽を聴きたいと感じている。ラフ・トレード・ショップ(※)によく足を運び、新人がヴァイナル(LPレコード)で先行リリースするアーティストのレコードを買うのが好きなんだ。彼らを可能な限り援助したいんだ。レコードをプレーヤーにのせてかける、という儀式がたまらないんだよ。ジャケットを見ながらね。僕は音楽に取りつかれているし、若いアーティストを可能な限り援助したい。トム・オデールやサム・スミス、ジェイミー・ブレイクとよくランチするよ。マネジャーになりたいわけでなく、キャリアのアドバイスができればと思っているだけだ。アーティストとしての技を若いアーティストに伝えたいと思っているんだよ。

※ラフ・トレード・ショップ 西ロンドンにある草分け的インディー・レコード・ショップ

(聞き手 音楽ライター・高野裕子)

週刊朝日 2016年1月22日号より抜粋