過去最高益でも給料が減っている理由は?(※イメージ)
過去最高益でも給料が減っている理由は?(※イメージ)

 アベノミクスから3年経ったが、その成果のひとつが、「円安・株高」だ。

 12年11月、民主党・野田政権が解散を表明した後に8600円台だった日経平均株価は急騰。昨年6月24日に一時2万952円と第2次安倍政権発足以来の高値をつけた。為替相場は1ドル=80円前後だったのが、円安が進み120円台を推移。輸出企業を中心に、相次いで過去最高益を更新。アベノミクスでは、企業業績が改善すれば、従業員の給料もアップする。消費者の購買意欲が高まり、デフレから脱却できる──という青写真を描いていたが、誤算だったのは、賃金が上がらなかったことだ。

 厚生労働省が発表した昨年9月の毎月勤労統計によると、夏のボーナスは35万6791円と、前年同月比マイナス2.8%。全産業の平均月給は15年10月が26万6426円で、13年1月時点と比べると、約3500円減っている。なぜか。経済評論家の斎藤満氏が言う。

「財務省の法人企業統計の、企業が従業員に支払った給与の総額を見ますと、12年10~12月期は29兆円ありましたが、直近の15年の7~9月期は28兆円。1兆円減っています。企業は過去最高益を出しているのに、従業員の給料は減っている。どこにお金が向かっているのかというと“内部留保”をため込んでいるのです」

 内部留保とは、企業が経済活動を通して獲得した利益のうち、企業内部で蓄積した部分のこと。直近の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業がため込んだ内部留保は301.6兆円。3年前と比べて約40兆円も増えた。同志社大学大学院ビジネス研究科教授の浜矩子氏は言う。

「日本企業の好業績は円安がもたらしたもので、経営者たちは未来永劫、これが続くとは思っていない。地球の裏側で起きたことでも、自分たちの経営を狂わす衝撃となって襲ってくるという不安感から、業績が上がっても分配することができない。だからため込んでしまうのです」

週刊朝日 2016年1月22日号