「“筋の通った”とわざわざ強調したのは、それ以外の選挙区の候補者調整は『筋が通っていない』ということ。民主党にクギを刺したかったのだろう」

 参院選と衆院選のダブル選挙の可能性について触れておきたい。

 安倍首相が参院選に合わせて衆院を解散し、衆参ダブル選挙に持ち込む可能性について、6日には自民党の佐藤勉国会対策委員長が「全然ないという話ではない」と、可能性を示唆した。永田町では「ダブル選は本当にあるのか」という話題で持ちきりだ。その可能性について、政治評論家の浅川博忠氏は言う。

「安倍さんは子供のころから祖父の岸信介元首相から『憲法改正をやりたかったが、60年安保で余力がなくなった』と聞かされていた。安倍さんは、憲法改正をやるために政治家になったようなもの。野党の選挙態勢が整っていない今年夏に解散してダブル選に勝利すれば、19年まで3年間は国政選挙がなく、憲法改正に取り組みやすくなる」

 浅川氏の情勢分析によると、仮にダブル選になれば、自民、公明に加えておおさか維新も含めた改憲勢力は、17議席増の357議席に達する。憲法改正の発議に必要な317議席を優に超える。参院選後の17年ごろから、緊急事態条項の追加など「お試し改憲」の議論が始まりかねない。

 ただ、ダブル選に持ち込むにしても、クリアすべきハードルがある。その一つが、町村信孝前衆院議長の死去に伴う4月24日の衆院北海道5区の補選だ。すでに町村氏の娘婿である和田義明氏が、自民からの出馬を表明。野党は、民主北海道常任幹事の池田真紀氏を擁立し、共産は野党共闘のために候補者の取り下げを検討している。野党共闘の“威力”を測る選挙戦になりそうだ。ある自民党関係者は、こう漏らす。

「補選の結果次第でダブル選をやるかどうかが決まる」

 さらに今月24日投開票の沖縄・宜野湾市長選も注目を集める。米軍普天間飛行場を抱える同市は、辺野古基地移設が争点になっていて、自民・公明が現職の佐喜真淳氏を支援。辺野古基地建設阻止を目指す翁長雄志沖縄県知事は、志村恵一郎氏を擁立。地元紙の情勢調査では横一線の戦いを繰り広げている。

 参院選まであと半年。日本の命運がかかった一戦までに、まだひと波乱もふた波乱もありそうだ。

週刊朝日  2016年1月22日号より抜粋