打者の活躍が目立った2015年。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、2016年は投手の奮起に期待したいという。

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 2015年を振り返りつつ、新年の野球界の課題をまとめてみよう。

 まず、野球賭博問題。OBも含め野球界全体で真剣に再発防止に取り組まなければいけない。今年はグラウンドで、プレーで、大きな話題を呼べるように選手も球団も尽力しないと。

 15年は打高投低の年だった。打者では、山田哲人(ヤクルト)、柳田悠岐(ソフトバンク)の2人がトリプルスリーを達成した。秋山翔吾(西武)が216安打とシーズン最多安打のプロ野球新記録を樹立。川端慎吾(ヤクルト)が「攻撃的2番」の形を示すなど、明るい話題が目立った。

 投手出身の私の立場からすれば、ぜひ投手が脚光を浴びる年になってほしい。大谷翔平日本ハム)はもっと投手に軸足を置いて20勝を目指してもらいたい。藤浪晋太郎(阪神)はセ・リーグを圧倒する投手に成長しなければならない。

 日本のエースとも言える前田健太がメジャーに移籍するのだから、誰かが圧倒的な存在にならないと。松坂大輔、ダルビッシュ、田中将大とエースの系譜を誰が継いでいくか。世界に誇る日本の投手の力を示す年であってもらいたいよな。

 最近の投手はツーシームなど、曲がり幅の不確定要素の多い球種に頼りがちではないか。

 
 黒田博樹(広島)のようなベテランなら問題はないよ。なぜなら、どうやったら打ち取れるかの投球術を身につけ、その球種の効用を理解したうえで使っているから。でも、若手投手が見よう見まねで多投していると、かえって成長を阻害するよ。

 例えば、右打者の内角にシュートを投げる。シュートは曲がり幅も自分で把握できる。それがツーシームだとどうか。空気抵抗で曲がる球種だし、変化の幅は投手自身には把握できないことが多い。これだと、打たれたあと、曲がりが大きすぎて打たれたのか、狙われたのか、コースが甘すぎたのか、原因を把握できない。

 投球術は、打たれたり、抑えたりしながら身につけるものだ。結果へ至る過程が把握できないと、すべてが結果オーライで終わってしまうよな。

 山田や柳田がなぜ、すごいのか。フルスイングする中でのバットコントロールを持っているからだ。投手も同じ。まずは腕をしっかり振る中で、制球や投球術を身につけていく。

 細かい球種や、小手先の技術に走っていては、いつまでも成長できない。各球団のエースはともかく、ローテーションの3~4番手にいる投手に、スケールの大きさを感じさせる存在が少ないのも、小手先に走る投手が多いからではないか。

 投手の奮起に期待するといえば、松坂大輔(ソフトバンク)も含め、35歳前後の投手の活躍が寂しかった。山本昌(中日)や西口文也(西武)など大ベテランが引退した。35歳前後のベテランが若い選手の手本にならないと、若手は育たない。球界が発展していかないよ。

 西武の渡辺久信や郭泰源もそうだったが、やっぱり30歳過ぎから力が落ち、35歳前後に壁にぶつかる。そんな投手を何人も見てきた。どうやって選手寿命を延ばすか。球界が一気に若返ると、オールドファンが楽しめなくなるという面もあるから、ぜひ考えてほしい。

週刊朝日  2016年1月15日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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