落語家・春風亭一之輔のちょっと変わった「爆買い」の楽しみ方 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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落語家・春風亭一之輔のちょっと変わった「爆買い」の楽しみ方

連載「ああ、それ私よく知ってます。」

「爆買い」の裏に…

「爆買い」の裏に…

 おじさんは「温熱アイマスク」の箱を興味深そうに見つめている。会社の若いOLさんにでもあげるのか。化粧品や食べ物だと好みが分かれるし、これなら、

「パソコンばっか見てると目ぇ疲れるやろ?」
「わー、課長ー。これ欲しかったんですぅー!」

 という具合に女子の評価も上がるかもしれない。おじさんもいろいろ気を使う。

 おじさんは山積みの生理用品の一つを手にとって、そばのおばさんと何か話し始めた。奥さんか。奥さんは怪訝そうな表情でまくし立てた。

「そんなもん、お土産に買うてく人おるわけないやろっ! 軽いセクハラやでっ!」
「……さよか?」
「当たり前や! 私の分だけでえーがな!」

 奥さんは10個ばかり買い物カゴに放り込む。

「……使いきれるか?」
「ちょっと、あんた! それどーいう意味やっ!!(怒)」

 おじさん、下を向いた。

 奥さん、紙オムツの棚の前で考えている。

「あんた! いくつ持てる!?」
「せいぜい四つやろ」
「店員さーん、10ください!!」
「持てへん、持てへんっ!」
「何言うてんの! 可愛い孫のためやないの!! △△さん(婿の名前)も若うないんやさかい、国もええ言うとるし、もう一人作るかもわからんのやで!!」
「次は女の子がええなぁ。しかし◯◯は何であんなオヤジと一緒になったんやろ? ワシと三つしか違てへん……」
「またその話かいな!(怒)」

 レジから出てくる長過ぎるレシートを楽しげに眺めている奥さんの脇で、おじさんが虚ろな目をして佇んでいる。レシートは蛇が這うように床まで伸びた。

「爆買い」の裏にはいろんな人間模様があるに違いない。

週刊朝日 2016年1月1-8日号


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春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中

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