武家のしきたりを受け継ぐ小笠原家(撮影/写真部・松永卓也)
武家のしきたりを受け継ぐ小笠原家(撮影/写真部・松永卓也)

 武家のしきたりを受け継ぐ小笠原家。年の初めを迎える正月飾りは、その厳かな美を今に伝える。

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「当家は800年以上にわたり、武家の礼法を守り続けています」

 弓馬術礼法小笠原教場三十一世宗家・小笠原清忠さんは語る。

 小笠原家は鎌倉時代、源頼朝に弓馬術と礼法の指南役として招かれたのを機に、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜まで、代々弓馬術礼法の師範役を務めた。

 正月飾りは、床飾りに縁起のいい掛け物を飾り、熨斗(のし)三方を正面に据え、両側に蝶飾りをつけた燗鍋を置く。武家にとって最も大事な道具である具足(甲冑・かっちゅう)の前に具足を、女子の持ち物の象徴である手鏡の前には鏡餅を供え、新年を迎える。また、屠蘇(とそ)の肴として喰積(くいづみ)を飾ることもある。

 元旦は雑煮と屠蘇のみ。昼に正月膳をいただくのが習わしだが、あくまで質実を旨とする。

「正月は華美な飾りはしませんし、おせちもシンプルと言えるでしょう。何事も実用、簡素、そして美を大切にしています」(小笠原さん)

週刊朝日  2016年1月1-8日号