2015年は、タモリさんに頼まれて落語も作った。依頼者が依頼者だけに、まずいものは作れないというプレッシャーの中、赤坂ACTシアターでの落語会で、花魁と武士の話を披露。好評を博したが、最終日になっても、タモリさんは来ない。

「そんな話を落語会でしてたとき、菊の花を持ったおっさんが、通路を歩いてきて、『何かあったら嫌やな』と思ってたら、タモリさんやった(笑)。ぱっと顔見たとき、泣きそうになりました。その上、『よかったよ』なんて珍しく褒めてくれて」

「シーズンズ」のテーマは自然賛歌だが、鶴瓶さんの日常そのものが、まさに人間賛歌。映画を観ると、次々に出てくる動物に比べて人間はなんて愚かなんだろうと感じざるを得ないが、愚かさも含めて命あるものすべてを愛しているような、鶴瓶さんの語り口に、ふと和まされる。

「人間いうのは、愚かであることもオモロいなと思うんです。落語には、本当に悪いヤツは出てこなくて、愚かなヤツが出てきても、最後は必ず負けます。僕は5人きょうだいの末っ子ですけど、父親も母親も面白かった。この間一番上の姉ちゃんに電話で、『あの両親に育てられて、よかったなぁ』としみじみ話しました。前に、奈良の大きなホールでの落語会のとき、『子供の頃は六軒長屋で』って言ったら、どっかから『四軒や!』って叫ぶ声がして、『何で知ってんのや!』って聞いたら、『お前の姉や!』って(笑)。勝手にチケット買うて、来てたんです。ウチの家族がみんなオモロいのは、両親のお陰やと思います」

週刊朝日 2016年1月1-8日号