また、入浴直前に浴室を暖めるとよい。衣類を脱ぐ前に風呂のフタを開けたり、シャワーをかけたりするだけでも、部屋を20度ぐらいまで暖められる。かけ湯も大事だ。心臓から遠い手や足から少しずつかけるのがポイントで、国際医療福祉大学教授でリハビリ医の前田眞治さんが行った実験では、5回以上かけ湯をすると、血圧の変動がかなり抑えられたという。

 入浴の時間も大事で、日没前の暖かい時間帯に入ろう。ヒートショックの原因となる温度差をできるだけ減らすには、湯温は体温に近いほどよい。だが、低くなれば当然、体は温まりにくくなり、湯冷めも早い。41度以下を目安に、入浴剤などを活用して湯冷め予防を。長湯は血圧を下げるので×。5分程度にしておきたい。

 入浴中の事故は瞬時に起こるため、家族がいても気付かないことも。子どもや孫と同居なら孫と入ろう。一人暮らしなら、この期間だけは昼間に公衆浴場などを利用するのも手だ。

 当然ながら、食事や飲酒直後の入浴は控える。リラックスして副交感神経が優位になるため、血圧が普段よりも下がりやすいからだ。少なくとも1時間以上は間をおくようにしたい。

 このほか、具体的な取り組みの一つとして、温度計を脱衣所と浴室に置くことを勧める専門家もいる。

「高齢者は年齢とともに寒さに対する感覚が鈍くなるので、感覚に頼るのはよくありません。デジタルの温度計を設置し、温度が目で確認できるようにしておきましょう」(前田さん)

 暖冬とはいえ、寒さはこれからが本番。健康第一で冬を乗り切りたい。

週刊朝日  2016年1月1-8日号より抜粋