この入浴時の血圧変動について、前田さんは健康的な被験者(20~40代・男女8人)に脱衣所の室温10度、風呂の湯温41度の状況で入浴してもらい、血圧(上の血圧)の変化をみる実験を試みたことがある。

 平均すると、脱衣所では約100mmHg(以下、単位略)だった血圧が、衣類を脱いで裸になると110、浴室に入ると115になり、湯に入った直後は140まで上がった。その後は血圧が下がり始め、湯に浸かって10分経つと90以下になった。15分程度で50も血圧が上下したことになる。

 前出の高橋さんも同じような実験をしている。すると平均で30の血圧の上下変動が起こり、なかには90も変動した人もいたという。

「この方の場合、184の血圧が90に下がりました。高血圧の人であれば決して珍しい現象ではありません」(高橋さん)

 それより気になったのは、この被験者は大幅に血圧が変動したにもかかわらず、立ちくらみなどの症状はなく、ケロッとしていたという点だという。

「ヒートショックが怖いのは、“入浴のたびにこういう血圧の問題が起こっているにもかかわらず、本人は気づかない”ところにあります。症状がないので気を使わず入浴を続け、ある日突然、大事に至る。だからこそ、日ごろの対策が大事なんです」(同)

週刊朝日  2016年1月1-8日号より抜粋