FXは「証拠金」を担保に何倍もの金額の外貨を大きく運用できるが、相場が急激に変動した場合、大きな損失を被る恐れもある。通常は証券会社やFX会社が証拠金の追加を通知したり、「ロスカット」と呼ばれる強制決済をしたりして大きな損失を回避するが、夫が亡くなったこの日、世界では複数のFX会社が倒産したほど激しい相場の変動が起きていた。夫の元にも証券会社から連絡は入っていたが、そのときにはすでに事故に遭っていた。「FXをやっていたと知っていれば、何らかの手を打てたかもしれないのに……」。預貯金で対応したが、B子さんは納得がいかず弁護士に相談しているという。

 同様のことはネットや電話による株や商品の先物取引でも起こりうる。自分の死後、こうしたトラブルを回避するにはどうしたらいいのか? 萩原さんは「エンディングノートを作ることが大事」と話す。

「記すべきは、資産や投資など金銭に関すること。ネットバンキングの口座やパスワード、ネットで株やFXをやっているなら証券会社の連絡先など、もれなく記録に残すのです」

 A子さんの事例では、ブログのパスワードがわからないと、家族ですらアカウントを削除できない可能性もある。資産に限らず、パスワードの類は記録しておくべきだろう。

 萩原さんが勧めるのが「紙で残すこと」だ。「データにしてパソコン内に保存する方法もありますが、インターネットにつながったコンピューターの中にある限り、ウイルスに感染するなどで流出する恐れがある。紙で保管しておけば、よほどのことがない限り、それを目にすることができるのは家族や近しい人物に限られるはずです」

週刊朝日 2016年1月1-8日号より抜粋