「かぐや姫」は父を越えられるのか (c)朝日新聞社
「かぐや姫」は父を越えられるのか (c)朝日新聞社

 大塚家具創業者の父・大塚勝久氏と娘・久美子氏(現社長)が、株主総会で委任状争奪戦を繰り広げたお家騒動から10カ月。戦いに勝った久美子氏は、大塚家具から父親のカラーを消そうと必死だ。

 同社は2015年4月、騒動についての「お詫びセール」をし、売りつくしセール第1弾(11月7~23日)、第2弾(11月28日~12月20日)と連打。16年1月には札幌市内の商業施設「サッポロファクトリー」内に「IDC OTSUKA サッポロファクトリー」を出店する。そのほか、映画「スター・ウォーズ」デザインの商品を展開するなど、勝久氏時代の高級家具路線とは一線を画し、月次売り上げはほぼ前年同月比増と好調だ。

 一方の勝久氏は、保有している同社株を売り始めた。16年3月までに、163万6500株を手放すというが、個人投資家の間で同社の株は人気が高い。委任状争奪戦を繰り広げた際、久美子氏が1株当たり40円の配当金を15~17年12月期に80円に上げると明言したからだ。同社の配当利回りは5%近くと、上場企業の中でも高い。

高配当利回り企業を好む個人投資家が買っています。ただ、このタイプの投資家たちは業績が伸びても配当利回りが落ちれば、株を手放すでしょうね」(SBI証券の藤本誠之氏)

 親子げんかが繰り広げられる前の1月上旬に1000円前後だった株価は、今や1600円前後。市場関係者の中には、好業績でも株価はもう上ぶれしそうにないとの見方がある。

「もう一回、親子げんかが勃発し、他の家具メーカーが買収するようなことがあったら、株価は上下に動くでしょうね」(同)

 結局、この騒動で儲(もう)かったのは、大塚親子なのかもしれない。

(本誌取材班=上田耕司、亀井洋志、小泉耕平、永井貴子、長倉克枝、永野原梨香、鳴澤大、西岡千史、秦正理、林壮一、牧野めぐみ、松岡かすみ、山内リカ/今西憲之、菅野朋子、岸本貞司、桐島瞬、柳川悠二)

週刊朝日  2016年1月1-8日号