(c)カトリーヌあやこ
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 漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「M‐1グランプリ2015」(テレビ朝日系 12月6日18:30~[特番])は、権威感が消えた笑いの祭典だったという。

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 5年ぶりに開催された漫才日本一決定戦「M‐1グランプリ」。似たような番組を他局でやっていたので、それほど久しぶりとは思わなかったけれど、島田紳助と松本人志がいない「M‐1」は、やっぱりちょっと空気が違っていた。

 今回の審査員は、中川家をはじめとした歴代「M‐1」王者の面々だ。かつて紳助がかもし出していた「この大会はたいしたもんなんや」ってな権威感や、出場コンビのほとんどが抱いていただろう「天才」松本人志(当初まだ映画を撮ってなかったんで)に対する畏怖。取って付けたような笑顔を浮かべながらも、決して目が笑っていない中田カウスの圧迫。舞台を降りた後も、楽屋でコンコンと濃密なダメ出しを繰り出しかねないオール巨人の王道師匠っぷり。

 当時の「M‐1」は、まさに「師匠へのネタ見せ」を全国に生放送される公開修羅場の様相で、出場コンビにはヒリヒリするような緊張感があった。でもね、今回の審査員は、みんなの先輩です。仲間です。生々しいほど現役なので、ブラックマヨネーズの吉田のように「(ネタに)いいもんあったら、パクるつもりで来てます」と、ちょいちょい笑いを取りにきて、審査員席にいながらバラエティ番組のひな壇状態。客席だって「エンタの神様」を見に来たんじゃないの?ってくらい、あったかいノリだ。

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