「建前上は返さなければいけないが、年収が200万円なければ、返済を待ってくれという申請を出せば猶予してもらえます。毎年出し続けて、年金をもらえる年まで逃げ切ればセーフ! 年金で200万円以上になるはずはないから、死ぬまで払う必要はありません」

 出席者たちが困惑の表情で顔を見合わせた……。

 ウィッツ青山学園は、小泉政権下で三重県伊賀市が株式会社に学校運営を認める「教育特区」となったことを受けて、2005年9月に開校した。通信制の生徒約1200人を抱え、伊賀市の本校のほかに、全国40カ所以上のサポート校があり、各サポート校は入学の窓口にもなっている。

 特捜部が12月8日、一斉捜索した先は本校、運営会社、サポート校「四谷キャンパス」などだ。学校関係者によれば、四谷キャンパスの生徒数は150人で、東京23区内にある六つのサポート校の中ではいちばん多い。四谷キャンパスを大きくした立役者はB理事の“生徒募集システム”だという。

 通信制の高校は、すでに働いている社会人や高校中退者、不登校者が利用することが多いため、自宅で学習し、試験、リポートなどの提出で卒業資格を得ることができる。

 ところが、B理事は「何もしないでも卒業できる」とアピールし始めた。

「教材が年に1回ドカーンと送られてきます。あと、年に3回、リポートの課題が送られてくる。でも、それは出さなくてもいいんです」

 不審に思った参加者が「何も勉強はしないの?」とB理事に質問すると、笑いながらこう答えた。

「どうしてもやらなくちゃいけないのは、年に2回の『スクーリング』だけです。2日だけスクーリングに行けば、あとの363日は自由に過ごしていただく」

 スクーリングとは、面接指導のこと。ウィッツ青山学園の場合は、本校がある伊賀市へ行く必要がある。

「でも、日帰りですよ。行って写真撮るだけですから。こんなこと僕が言っちゃいけないですけどね。まあ、“証拠写真”がいるんですよ。囚人みたいに名前のプレートみたいのを持って、パシャッと撮って、はい終わり。それが100人以上いるから、順番を待つのに1時間くらいかかる」

 実際に昨年度に卒業したY氏に聞いた。

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