林:私も直木賞をとるためにテレビに出るのやめて、家にこもって書いていたころ、タクシーの運転手さんに「このごろ見ないけど、何で食べてるの?」って言われたことありましたけど。

舟木:まあ、あのころの一般論ですよね。流行歌手は売れてる順番にわんさかとテレビに出てましたから。

林:当時は日本列島がその歌一色になりましたよね。誇張じゃなくて。

舟木:今はテレビの歌番組も少ないし、顔ぶれも決まってるわけですよ。一人ひとり自分が好きな歌をイヤホンで聴いてますからね。今、流行歌って、ほとんどカラオケの世界でしか生息してないんじゃないかな。

林:そういう中にあって、舟木さんは「通じる人たちだけを相手に歌います」とはっきりおっしゃって、その数が増えているというのがすごいですね。コンサートのとき、「高校三年生」を別とすれば、皆さんがいちばん喜ぶのはどの歌ですか。

舟木:おかげさまでたくさんありまして、「学園広場」「北国の街」「哀愁の夜」「絶唱」「高原のお嬢さん」……。

林:私、この季節に枯れ葉が舞っているところを歩くと、「高原のお嬢さん」の「♪あの人に逢いたい……」というメロディーがふっと出てくるんです。

舟木:あれは名曲ですよ。あの曲や「銭形平次」は、似たようなものを作ったらすぐバレちゃうメロディーです。

週刊朝日  2015年12月18日号より抜粋