第一生命経済研究所の主席エコノミストの西濵徹氏はこう分析する。

「数百億㌦は売却した可能性があります。人民元の急落を防ぐための為替介入を行うのに必要な資金調達に使われたとみられます」

 米格付け会社・スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、米国債の格付けはAA(ダブルエー)プラスで、上から2番目。

「金利は少し上がりましたが、暴騰はしませんでした。米国は財政赤字削減に熱心ですし、日本とは信用力が違います」(加藤氏)

 日本国債の海外保有が増え続けた場合、海外勢が日本国債を投げ売りし、金利が急騰してしまう可能性はないのか。加藤氏は言う。

「海外勢の売りを助長しないためには、何より財政再建を進めなければなりません。腕のいいセールスと、商品の中身(日本国債の信用)は車の両輪。信用力があったら売られることはあっても、そのほかの海外勢をはじめとした投資家が買ってくれるでしょう」

 S&Pは9月、日本国債の格付けをAAマイナスから、Aプラスに1段階下げた。中国や韓国よりも低い。財政再建が進まぬ「日本政府への牽制」との見方が市場関係者に広まり、安倍政権には冷や水になった。国債をめぐる神経戦はしばらく続きそうだ。

週刊朝日 2015年12月18日号