北原みのり「『テロとの戦い』とは…」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「『テロとの戦い』とは…」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

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あれから14年。パリで起きたことは、ネットで知った(※イメージ)

あれから14年。パリで起きたことは、ネットで知った(※イメージ)

「テロに遭う時は遭う、そういう時代を生きているんだと思う」と、彼女は言い、それを聞いていた周りの人は大きく頷いた。また、ヨーロッパに住む日本人の中には、「安保法が通り、日本が中東の戦争に参加するようなことになったら、ヨーロッパに住む私たちが危険に曝される」と、恐怖する人も少なくなかった。

 2001年9月にはじまった「テロとの戦い」は、いったい何を変えてきただろう。戦いの目的が戦いを終わらせることなのだとしたら、そもそも戦い方を間違い続けているのではないか。「テロとの戦い」こそが世界を、より深刻に破壊しているのではないか。そして日本は、外国で起きているこの苛烈な戦争に、自ら首を突っ込もうとしているのだ。

 テロに屈しない。テロとの戦いだ。

 そんな声が早くもあちこちから、聞こえてくる。テロに負けないことを表明するため、いつも通り電車に乗り、買い物し、カフェでくつろぐパリ市民の姿がテレビに映し出される。そしてそれは、フランスがシリアを空爆してきた間も、繰り返されてきた平和な日常と同じ光景だろう。

「憎むべきはイスラム教ではなくテロである」と、そんな当たり前のことを声高に語り、「テロは許さない」と拳を振り上げるような声が、私は今、とても怖い。

 一見冷静に見える良心、咎めようのない正義が社会全体で一致団結していく様が、また新たな「テロとの戦い」の幕を開けるだろう。それが不毛であること、そして一般市民がただ恐怖に巻き込まれ、犠牲になることしか意味しないことを、私たちは充分に学んできたというのに。今はまず、世界中の全ての犠牲者を悼みたい。

週刊朝日  2015年12月4日号


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北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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