歌手 鮫島有美子(さめじま・ゆみこ)東京都生まれ。1975年、二期会オペラ「オテロ」のデズデーモナで主役デビュー。その後、ドイツ政府奨学生としてベルリン音楽大学に留学。名ソプラノ、エリザベート・グリュンマーに学ぶ。82年、ウルム歌劇場(ドイツ)の専属歌手となる。85年、「日本のうた」でレコードデビュー。CDブック『歌声の響』(朝日新聞出版)が発売中(撮影/横関一浩)
歌手 鮫島有美子(さめじま・ゆみこ)
東京都生まれ。1975年、二期会オペラ「オテロ」のデズデーモナで主役デビュー。その後、ドイツ政府奨学生としてベルリン音楽大学に留学。名ソプラノ、エリザベート・グリュンマーに学ぶ。82年、ウルム歌劇場(ドイツ)の専属歌手となる。85年、「日本のうた」でレコードデビュー。CDブック『歌声の響』(朝日新聞出版)が発売中(撮影/横関一浩)

「赤とんぼ」「夏の思い出」など、日本人なら誰もが知っている歌曲を歌い人気を博したソプラノ歌手の鮫島有美子さん。先日、天皇陛下が作詞され、皇后陛下が作曲された曲を歌ったCDブック「歌声の響」を出しました。作家・林真理子さんとの対談では、その歌に込めた思いを明かした。

*  *  *

林:これは短歌と思ってよろしいんですか。

鮫島:琉歌といって、沖縄周辺の島々に伝わる定型詩なんです。短歌が五七五七七からなるのに対して、琉歌は八八八六が基本ですね。

林:琉球の言葉で書かれているんですね。陛下は琉球語をお習いになったんですか。

鮫島:陛下は沖縄のことを理解するためには歴史はもちろん、文化や芸術も理解する必要があると思われて、独学で学ばれたそうです。陛下が沖縄の言葉で書かれたというのは、とても大切なことだと思います。

林:素晴らしいですね。(歌詞を見ながら)「だんじよかれよしの歌声の響 見送る笑顔目にど残る」……。「だんじよかれよし」ってどういう意味なんですか。

鮫島:沖縄にかりゆしウェアってありますでしょう。

林:はい、沖縄のアロハシャツみたいな。あ、「♪だんじょかりゆしチャッチャッチャ……」という歌があったと思いますけど、あの「だんじょかりゆし」ですか。

鮫島:そうです。沖縄の発音だと、「かりゆし」なんです。「まことにめでたい」というような意味で、お祝い事や旅立ちのお祝いに使われる言葉だそうです。陛下の歌を意訳すると、「だんじょかれよしの歌声の響きと、それを歌って見送ってくれた人々の笑顔が今も懐かしく心に残っている」という意味になります。

林:そのお歌に、皇后さまが曲をつけられたのですね。美智子さまは「ねむの木の子守歌」という歌の作詞をなさってますけど、作曲はこちらが初めてでいらっしゃるんですよね。

鮫島:だと思います。天皇陛下が詞を書かれて、皇后さまが曲を書かれた作品というのは、世界を見回しても唯一無二ではないかと思います。

林:皇后さまはご自身でもハープやピアノを演奏なさいますが、プロの方がお聴きになって、この旋律はいかがですか。

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