「仏語で呼びかける宣伝映像も数多く投稿され、『ダールル・イスラーム』という仏語版だけの雑誌も存在する。ISが重点的に仏語圏を狙ってきたことがわかります。今回の犯人も『ダールル・イスラーム』を読んでいたと考えるのが自然。英文の機関誌『ダビク』には他に仏語版、独語版があります」(保坂氏)

 こうした情報を総合するとスペイン、ポルトガルや北欧3カ国などは比較的安全な部類に入りそうだが、「安全」とは言い切れそうにもない。

 ところで、旅行先では何に気をつけたらいいのか。立正大学の小宮信夫教授(犯罪学)は、テロリストの気持ちになって、危険を予測すべきだと語る。

「テロリストは群衆に紛れて身を隠すことを考えるもの。大人数が集まり、アラブ系の住民に紛れこめる欧州の大都市の繁華街や観光地は逃走が容易な上にテロが与える被害や社会への影響も大きく、最も警戒すべきです。特にクリスマスやニューイヤーのカウントダウンは格好の標的。万一の時の避難ルートを事前に考えておくべきですし、できればセキュリティーの厳しいホテルの窓などから見ることをお勧めします。大都市よりは人の少ない地方都市のほうが大規模テロのリスクは少ないが、地方でも不用意な単独行動は控えたほうがいい」

 テレビで流れる悲惨な映像を、対岸の火事と見てはいけないのである。

週刊朝日  2015年12月4日号より抜粋