このドラマに、いわゆる「ありきたりな家族」は存在しない。元夫からのDVが原因で、男性恐怖症になったシングルマザー・しおり(内田有紀)は、ヒロに愛を告白する。女を愛する女。男を愛する男。男を愛する男を、愛する女。「偽装の夫婦」であるヒロと超治の家は、悩める傷ついた者たちの駆け込み寺のよう。

 世間の常識を破壊しまくってきた遊川さんだけど、このドラマには破壊の先の再生が、うっすらと見える。「理想」に見える夫婦や家族が、本当に幸せかどうかはわからない。肉体関係のない「偽装の夫婦」、血縁関係のない「偽装の家族」こそ、実はいたわり合う関係を築けるんじゃないか?そんな理想の「偽装の夫婦」。

 しかしそこは、前作「◯◯妻」で、最終回にヒロイン・柴咲コウを土手の階段から転落死させたバッドエンド遊川。天海祐希にどんな突発的不幸が訪れるのか、予断は許さないけどね。

週刊朝日 2015年12月4日号