一方で大きく変化したのは、自転車に対する認識だ。以前ならば自転車も歩行者と同じく、車による事故の「被害者」だった。ところが、自転車ブームの陰でブレーキのない自転車で公道を走る者や、スマホを見ながら乗る者など、ルールやマナーの違反者が周囲の受け止め方を変え、自転車が「加害者になり得る」との認識を広げたのだ。

 そうなると、トラブルも訴訟に発展。事故も増え、被害者が「若年層」や「高額所得者」「歩行者」にでもなると、賠償金額が一気に跳ね上がる。日本損害保険協会によると、乗用中の死傷者は65歳以上が18.8%と年齢別で最多。「中でも高齢者は転倒時に防御態勢が取れずに頭を打ち、重篤になるケースが多い」(谷原弁護士)という。

 その変化を裏付けるかたちで「自衛策」をめぐる動きも目立つ。ここ数年、損保各社は「自転車保険」を相次いで企画。最近では、損保ジャパン日本興亜がソフトバンクと組み、新商品「自転車あんしん保険」を発売。個人賠償責任は最高1億円、ソフトバンク契約者は面倒な手続きが不要で、保険料も携帯料金と一緒に引き落とせる。新商品の効果もあり、同社の自転車保険の保有件数(15年度上期)も昨年度末に比べて4倍に急伸。「高額賠償金などが話題となり、関心がすごく高い」(広報担当者)

「ドコモサイクル保険」のように、月々440円の保険料で最高2億円補償してくれるものもある。各種の保険と補償内容は下の表を参考にしたい。

◇各社の自転車保険
(保険名/保険料/個人賠償責任補償/特徴)
・au損保 あ・う・て ケガの保険Bycle/月々370円から/最高1億円(同2億円プランあり)/自転車事故のケガなら保険金2倍、示談代行

・DeNAトラベル 自転車の責任保険/月々300円から/同1億円(同2億円プランあり)/家族も補償対象、示談代行

・セブンーイレブン 「自転車向け保険」/年4160円から/同1億円/示談代行、店舗で簡単に手続き

・三井住友海上 ネットde保険@さいくる/年4490円から/同1億円/示談代行、電話の無料相談サービス

・ドコモサイクル保険/月々440円から/同2億円/示談代行、携帯電話で申し込み可

・TSマーク(赤)/点検整備料/同5千万円/自転車安全整備士が点検整備した自転車に貼付(1年間有効)

・自転車あんしん保険/月々330円から/同1億円/ソフトバンク契約者は保険料を携帯料金と一緒に引き落とせる

週刊朝日 2015年11月27日号より抜粋