自転車が加害者となる死亡事故は珍しくない(※イメージ)
自転車が加害者となる死亡事故は珍しくない(※イメージ)

 1億、2億は当たり前……。これは宝くじの当選金の話ではない。自転車による事故で請求されるであろう賠償金の話、である。もう「被害者だけ」の時代は終わったのだ。

 実は自転車が加害者となる死亡事故は珍しくない。警察庁によると、昨年は214件。今年は9月末までで185件(2013年以前はデータ修正中)もある。

 中には被害者遺族による民事訴訟に発展し、高額な賠償金を求められるケースもある。男児の自転車が衝突し、高齢女性が意識不明となった事故では、神戸地裁が9500万円の賠償金を認める判決を2年前に出した。交通事故に詳しい、みらい総合法律事務所の谷原誠弁護士は警告する。

「事故の過失の度合いは、刑事裁判の段階ではそれほど問われません。ただ民事裁判になると過失が厳しく問われる。遺族が求める賠償金が1億円なら、過失度合いが1割変わると賠償金は1千万円違ってくる。いずれ自転車による交通事故で賠償金が1億円を超えるケースも出てきます。損害保険各社が個人賠償責任で最高2億円の自転車保険を出し始めたのも、1億円超を予想するため。補償が無制限の保険が出てきてもおかしくありません」

 一体どういうことなのか。谷原弁護士によると、賠償金が高額になるのには二つの理由がある。一つは「慰謝料」だ。とくに将来、介護者や介護施設入所が必要となる場合、費用は大きい。二つ目は「逸失利益」だ。生きていれば得ていた収入が請求される。「これらが数千万円単位で、非常に高くなる」という。

 損害賠償の算定方法は昔から同じ。高額賠償のケースもあった。例えば、07年の大阪地裁の判例では、歩行中の男性(62)が自転車に衝突され、頭を強打して亡くなり、賠償金は約3千万円。08年には自転車の会社員男性(24)が自転車と衝突し、言語機能を喪失する障害を負った。賠償金は約9千万円だ。働けたであろうとされる期間が長いほど、逸失利益は高くなるのだ。

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