作家でコラムニストの亀和田武氏は、週刊朝日連載『マガジンの虎』で、テレビ雑誌「B.L.T.」を取り上げた
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午前2時。コンビニで一冊の雑誌が目に飛びこんできた。表紙の右側にタレント名がずらり並んでいる。
乃木坂46の西野七瀬と白石麻衣。そして森川葵、松岡茉優、おのののか。女性アイドルや女優に特化したテレビ雑誌「B.L.T.」(東京ニュース通信社)の12月号だ。これは買わなきゃ。条件反射で雑誌を手にとり、レジへ。クルマをひろって帰宅する。
家で雑誌を広げると、レレレ、どうも様子が違う。目当てのコたちの頁は僅か。改めて表紙を見れば、左側に大きく“私立恵比寿中学”の文字。アイドル・グループ“エビ中”の大特集がメインだ。
西野七瀬の名に惹かれて買ったのに、グラビア2頁に記事は2分の1頁。がっくり。よく、あるんですけど、こういうこと。アイドルに基本、興味のない私が、唯一気になって仕方ない子だ。愛称、なーちゃん、ななせまる。
西野の顔は地味だ。アタシがアタシがという、前に出ていく気迫も感じない。でも(だから、か)妙なフェロモンがある。関西弁で、さらに気持ちが煽られる。困ったね。
AKB48の峯岸みなみが1万字インタビューに応じていた。センターにはどんな人が立つべきかの質問に「無欲の人ですかね。センターって欲がない人が立つほうがカッコいいと思います。(中略)そして内に秘めているものはあっても、それを前面に出さない子」と峯岸は答える。劇場オープンから12月で10周年。13歳だった彼女もいま22歳だ。
大人になったね。名言も一杯あった。マーカーを塗っていると、大判の頁が真っ黄色に。無欲の人か。私が西野に惹かれるのも、そこかな。エビ中の特集は読まなくても、特別定価600円の価値はあった。
※週刊朝日 2015年11月20日号