“認知症”記者が神戸で30分「徘徊」 パニックの恐怖を語る

 認知症早期治療に励み、MCI(軽度認知障害)から回復基調にあると思い込んでいた山本朋史記者がまた失敗した。講演に行った先で、自分がどこにいるのかわからなくなって30分以上も「徘徊」したのだ。症状が進んだのか。不安は膨らんだという。

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 先月、「ボケてたまるか!認知症早期治療に取り組んで」という講演をするため、神戸市に行った。認定NPO法人「認知症予防ネット神戸」からの依頼だった。本誌で2度の連載をして以来、こうした声がかかることもたびたびある。ぼくは同じ悩みを持つ人の力になれるのならばと思って出かけた。

 新幹線で東京から新大阪まで行き、在来線に乗り換えてJR住吉駅へ。そこから徒歩5分の「コープこうべ生活文化センターホール」が会場だった。せっかちなぼくは予定より40分以上も前に住吉駅に着いた。駅まで理事長の伊藤米美さんが迎えに来ると言ってくれたが、目的地まで地図を見ながらぶらぶら歩いていくことにした。

 ところが、5分以上歩いてもそれらしき建物はない。途中で地図を見直すと、どうも逆方向に歩いていることに気づいた。線路を挟んで駅の反対出口から出てしまって、どんどん歩いていたようだ。

 すぐに駅まで戻って、通路を渡って正しい出口から目的地を目指した。しかし、そこでまた道を間違えてしまった。何度か同じ道を行ったり来たり。この風景は前にも見た。「あれ、あれ」と左右を見回す。ちょっとパニック状態になって、自分がどこにいるのかさえわからなくなった。

 このまま探し当てられないのではないか。予定の時間に遅れてしまうのではないか……。不安と焦りが膨らんでいく。横断歩道の真ん中で途方にくれた。

 時計を見ると30分以上も「徘徊」していた。誰かに道順を聞けばいいのに、地図があるんだからわかるはずと過信したのが失敗だった。早足になっていた。本来は大股で歩くようにしているのに、歩幅が狭まって、お嬢様歩きのようになって足もほとんど上がっていなかったのだろう。道路の段差につまずいた。

 そのときに、反対方向から歩いてきた中年女性から、

「何かお困りですか」

 と声をかけられた。ぼくは、手に持っていたiPadを開き、画面の地図を女性に見せて言った。

「ここに行きたいのですが、わからなくて」

 顔が青ざめているのが自分でもわかる。喉はカラカラで、声はかすれてしまっていた。すると、女性は、

「私もその近くまで行きますから、一緒に行きましょうか」

 と言ってくれた。完全に道を間違えていたようで、住吉川沿いにだいぶ戻った。国道2号と住吉川が交差する場所まで来た。

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